事業用定期借地で土地を貸す 借地借家法23条・公正証書・期間と地代
事業用定期借地権は、店舗や事務所、工場、倉庫など、事業のための建物を建てる人に土地を貸す方法です。契約は必ず公正証書で結び、期間は10年以上50年未満です。居住用の建物には使えません。期間が終われば更新はなく、原則として借りた側が建物を取り壊して土地を返します。
相続した土地を売らずに持ち続けたいとき、地主は建物を建てず、借り手に建ててもらって地代収入を得る選択肢になります。この記事は一般的な情報です。個別の判断は司法書士や弁護士、税理士、不動産の専門家にご相談ください。内容は2026年11月3日に確認しました。
借地借家法23条が決めていること
事業用定期借地権は、借地借家法23条が定める制度です。条文は3つの項に分かれています。

- 1項: 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的に、存続期間を30年以上50年未満とするとき、契約の更新、建物を建て直したことによる期間の延長、借地人からの建物買取請求をしない、と定めることができる
- 2項: 同じ目的で存続期間を10年以上30年未満とするとき、通常の借地権の期間や更新に関する規定(3条から8条)、建物買取請求の規定(13条)、更新後の建て直しの規定(18条)が適用されない
- 3項: この2つの借地権を設定する契約は、公正証書でしなければならない
国土交通省のページも、事業用定期借地権を、専ら事業用の建物の所有を目的に、存続期間10年以上50年未満で設定する制度として紹介しています。居住用には使えません。
土地の使い道の選び方は相続した土地の使い道の選び方にまとめました。
ふつうの借地権・ほかの定期借地権との違い
借地借家法の原則では、借地権の存続期間は30年で、契約でそれより長く定めればその期間になります(3条)。更新するときの期間は、最初の更新で20年、その後は10年です(4条)。期間が終わっても、地主の側に正当な事由がなければ更新を断れないため(借地借家法5条・6条)、貸した土地が戻らないことがあります。

表は左右に動かして読めます。
| 種類 | 期間 | 用途 | 契約の形 |
|---|---|---|---|
| 事業用定期借地権(23条) | 10年以上50年未満 | 専ら事業用の建物。居住用は不可 | 公正証書 |
| 一般定期借地権(22条) | 50年以上 | 国土交通省は用途の制限がないとしている | 特約は公正証書などの書面 |
| 建物譲渡特約付借地権(24条) | 設定から30年以上たった日に建物を譲る特約 | 国土交通省は用途の制限がないとしている | 国土交通省は、口頭でも可能とされるが書面が望ましいとしている |
事業用定期借地権と一般定期借地権は、期間が50年未満か以上かで分かれます。マンションや戸建て用に長く貸すなら一般定期借地権、店舗などで30年前後までなら事業用、と使い分けます。
借地借家法9条は、借地権者(借りる側)に不利な特約を無効としています。定期借地権の更新なしの特約は、22条・23条がこの原則の例外として認めたものです。
契約は公正証書で結ぶ
23条3項のとおり、事業用定期借地権は公正証書でなければ設定できません。私的に作った契約書だけでは、この借地権になりません。

公正証書は公証役場で公証人に作ってもらいます。手数料は、公証人手数料令9条が、法律行為の目的の価額に応じて別表で決めています。算定できないときは500万円とみなす定めもあります(同令16条)。賃貸借の契約で目的の価額をどう数えるかは、公証役場に確かめてください。
宮崎県が公開している覚書(素案)には、先に覚書を交わし、後日、公正証書で設定契約を結ぶ形が示されています。
期間と地代を決めるときの考え方
存続期間は、30年を境に条文の項が分かれます。

- 30年以上50年未満(1項): 更新なし・延長なし・買取請求なしの3つを、契約で定めて初めて効く特約として入れる
- 10年以上30年未満(2項): 更新や買取請求の規定が法律上適用されない。特約を入れ忘れて困る形ではない
地代は、契約の途中で変わることがあります。借地借家法11条1項は、租税などの公課の増減、土地の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動、近くの土地の地代との比較で地代が不相当になったときは、契約の条件にかかわらず、将来に向かって地代の増減を請求できるとしています。ただし、一定の期間は地代を増額しないという特約があれば、その定めに従います。
地代の額は、土地の立地や借り手の事業の内容で大きく違います。この記事に具体的な相場は載せません。複数の事業者から借地の提案を取り寄せ、条件を比べて決めます。
期間が終わったとき、建物はどうなるか
国土交通省は、期間が満了すると借地関係が終わり、原則として借地人が建物を取り壊して土地を返すと説明しています。更地に戻って返ってくるので、次の使い道を地主が自由に選べます。

国土交通省は、30年以上の事業用定期借地権に建物譲渡特約付借地権(24条)を併用できるとも説明しています。その場合、地主が建物を買い取らなければ期間満了で借地権が消え、借地人が建物を収去して更地で返します。
貸す前に契約書で決めておく項目の例を挙げます。
- 建物を建てる用途(業種や禁止する用途)
- 地代の額と支払い方法、改定の考え方
- 建物を取り壊す時期と費用の負担、更地の状態の基準
- 借地権や建物を第三者に譲ったり、転貸したりするときの承諾
- 借り手が地代を払えなくなったときの対応
借地権は、借地人が土地の上に登記した建物を持っていれば、第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。つまり借り手が建物を登記すれば、途中で地主が土地を売っても、借地権の主張が通ります。
貸せる土地かどうかを先に確かめる
事業用に貸すには、その土地に事業用の建物が建てられることが前提です。用途地域や接道の条件は、相続した土地の使い道の選び方で、市街化調整区域などの制限は市街化調整区域の土地でできる活用で説明しています。
相談先は、契約書の作成や公正証書の手続きなら弁護士や司法書士、行政書士、貸したあとの税金は税理士です。土地の条件を見てどの活用が向くかは、土地活用の事業者に複数相談して比べる方法があります。
出典
- 借地借家法(平成3年法律第90号) 3条・4条・5条・6条・9条・10条・11条・22条・23条・24条: e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- 公証人手数料令(平成5年政令第224号) 9条・16条: e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/405CO0000000224
- 国土交通省「定期借地権の解説」(事業用定期借地権) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000106.html
- 宮崎県「事業用定期借地権設定契約の覚書(素案)」(PDF) https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/55284/55284_20201102115739-1.pdf
いずれも2026年11月3日に確認しました。