相続した農地を貸す・転用するときの手続き 農地法3条・4条・5条と農地バンク
相続した農地は、まず農業委員会に届け出ます。そのうえで、貸す、売る、転用するなど、使い道ごとに手続きが変わります。農地を農地のまま貸したり売ったりするには、農地法3条で農業委員会の許可が原則として必要です。家や駐車場などにするには、4条か5条の許可が要ります。
貸すだけなら、農地バンク(農地中間管理機構)に貸す方法があります。この記事は一般的な情報です。個別の判断は農業委員会・行政書士・土地家屋調査士などの専門家にご相談ください。内容は2026年11月4日に確認しました。農林水産省と法令を中心に確かめています。
相続したらまず農業委員会へ届出
農地を相続した人は、農地の所在する市町村の農業委員会に届け出る必要があります(農地法3条の3)。遺産分割や包括遺贈で取得した場合も同じです。農林水産省のチラシでは、相続発生日からおおむね10か月以内とされています。

期限の数え方には違いがあります。千葉市の案内は、権利の取得を知った日からおおむね10か月以内としています。起点が違うため、迷ったら早めに農業委員会へ確かめてください。届出をしなかった場合は、10万円以下の過料の対象になりえます(農地法69条)。
この届出は、法務局への相続登記とは別の手続きです。届出をしても権利が移るわけではなく、農業委員会が相続の事実を把握するための手続きです。農林水産省のチラシには、地元を離れていて管理できないときは、農業委員会が管理の相談や借り手探しを手伝うと書かれています。
自分で耕作を続ける場合も、届出は必要です。水路などの共同利用施設の負担については、農林水産省のポータルが、市町村・農業委員会・土地改良区への相談を案内しています。
農地のまま貸す・売るときの許可
農地や採草放牧地の所有権を移したり、賃借権などを設定したりする場合は、農業委員会の許可を受けます(農地法3条1項)。許可を受けずにした行為は、効力を生じません(同条6項)。

許可がされない場合も、3条2項に定められています。たとえば、権利を取得する人が、取得後に農地のすべてを効率的に利用して農業を行うと認められない場合や、農作業に常時従事すると認められない場合などです。借り手や買い手が農家でなければ、許可が下りない場合があります。
貸すときに知っておきたいのは、貸したあとに返してもらう難しさです。農地の賃貸借の期間が満了する場合に、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨を通知しないと、従前と同じ条件で更新したものとみなされます(17条)。解約や合意解約、更新しない旨の通知をするには、都道府県知事の許可が要ります(18条。例外あり)。許可は、賃借人が信義に反した場合など、法律が定める場合に限られます。
貸す・売る手続きは、農地のある市町村の農業委員会で確かめられます。
農地バンク(農地中間管理機構)に貸す方法
農地バンクは、都道府県知事が各県に1つ指定する法人です。農地を借りて、まとまった形で借り手に貸し付けます。農林水産省のよくある質問ページによると、令和7年(2025年)4月から、農地の貸し借りは農地バンクを経由した方法に一本化されました。農地法3条許可による方法も、引き続き使えるとされています。

貸す側の利点として、同ページは次の点を挙げています。
- 農地バンクが賃料を受け取る仕組みなので、賃料が確実に振り込まれます。
- 固定資産税の軽減措置があります。令和8年4月1日以降、地域計画ごとに、所有する農地の全部を同じ年に農地バンクへ貸し付けた人が対象です。10年以上の期間で貸し付けた農地について、3年間、固定資産税が2分の1になります。
借り手は、市町村が作る地域計画に位置づけられた人です。誰に貸すかは自分で選べません。条件や相談先は、農地のある市町村と農業委員会、各都道府県の農地バンクの窓口で確かめます。このページには、貸した人個人に出る「協力金」の案内はありません。集約化に取り組む地域に交付される支援金は、交付先が地域です。個人が受け取れるかどうかは、窓口に確かめてください。
農地を転用する 4条と5条の違い
農地を農地以外にするには、農地法の許可が要ります。誰が転用するかで、条文が分かれます。

- 4条: 農地の所有者が、自分で農地を農地以外のものにする場合。都道府県知事等の許可を受けます。申請書は農業委員会を経由して提出します。
- 5条: 転用のために、売る・貸すなど権利の設定や移転をする場合。当事者が都道府県知事等の許可を受けます。
許可の可否は、農地の区分で大きく変わります。農林水産省の資料の整理は次のとおりです。
- 農用地区域内の農地: 転用は原則できません。
- 第1種農地(集団農地、土地改良事業の対象農地など): 原則として不許可です。
- 第2種農地(小集団で生産力の低い農地など): 第3種農地に立地できない場合に許可されます。
- 第3種農地(市街地にある農地など): 原則として許可されます。
- 市街化区域内の農地: あらかじめ農業委員会に届け出れば転用できます(4条1項7号、5条1項6号)。
許可権者は都道府県知事、または農林水産大臣が指定する市町村の長です。調整区域の土地の見方は市街化調整区域の活用の記事、用途地域や接道を先に調べる方法は相続した土地の使い道の記事、駐車場にする場合は駐車場の記事で扱っています。
転用して活用する場合は、複数の会社からプランを集めて比べると、判断しやすくなります。
市民農園として貸す方法
農地を小さな区画に分けて、利用者に貸す市民農園という使い方もあります。農林水産省の整理では、1989年に特定農地貸付法、1990年に市民農園整備促進法ができました。2005年の改正で、地方公共団体と農協以外の人も開設できるようになりました。2018年には、生産緑地などの都市農地を市民農園として借りやすくする都市農地貸借法ができています。

特定農地貸付法の「特定農地貸付け」は、次の要件を満たす農地の貸付けです。
- 政令で定める面積未満の農地を、相当数の者に定型的な条件で貸すこと。
- 営利を目的としない農作物の栽培のための貸付けであること。
- 政令で定める期間を超えない貸付けであること。
地方公共団体と農協以外の人が行う場合は、自分の農地であっても、貸付協定を市町村と結ぶことなどが要件に入ります。貸す人は、貸付規程などを添えて農業委員会に承認を申請します。承認を受けた貸付けには、農地法3条1項本文の許可の規定が適用されません(同法4条)。面積と期間の具体的な数字は政令で決まっています。農業委員会か、農林水産省の「市民農園をはじめよう」の資料で確かめてください。
手間の少ない方法とは限りません。募集や選考、利用者の管理が要ります。相続した農地をどう使うかは、貸す、転用する、市民農園にするなどを比べ、農業委員会と家族で話し合って決めます。
出典
- e-Gov法令検索 農地法(3条・3条の3・4条・5条・17条・18条・69条) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000229
- e-Gov法令検索 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000058
- 農林水産省 農地相続ポータル https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/nouchi_souzoku.html
- 農林水産省「農地を相続したときは、届出が必要です!」 https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/attach/pdf/nouchi_souzoku-6.pdf
- 千葉市 相続等で農地の権利を取得したときの届出(農地法第3条の3) https://www.city.chiba.jp/nogyo/souzoku-todokede.html
- 農林水産省 農地バンク(農地中間管理機構)よくあるご質問 https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/kikou/shitumon.html
- 農林水産省「農業振興地域制度と農地転用許可制度の概要」 https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/pdf/noushin_nouten.pdf
- 農林水産省 市民農園に関係する法律 https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/tosi_nougyo/s_houritsu.html
いずれも2026年11月4日に確認しました。