等価交換方式でマンションを建てるときの税金 所得税法58条と立体買換え(措置法37条の5)の違い
土地を出して、建つマンションの一部を受け取る等価交換方式では、税金の特例の選び方が大事です。国税庁の資料を読むと、所得税法58条の「固定資産の交換の特例」は、土地を出して建物を受け取る形には合いにくいことが分かります。この形では、租税特別措置法37条の5の「立体買換え」を使えるかどうかを確かめます。
受け取る建物の割合は、法令で一律には決まりません。土地の価値と建築費の割合を基本に、事業者との契約で決めます。この記事は一般的な情報です。個別の判断は税理士などの専門家にご相談ください。内容は2026年11月4日に確認しました。
等価交換方式とは

等価交換方式は、地主が土地を出し、事業者が建築費を出してマンションを建てる方法です。完成後は、土地と建物を出した価値の割合で分け合います。地主は土地の一部を事業者に渡し、その代わりに建物の一部を取得します。
東急リバブルのサイト「Lnote」では、建築の発注や資金の調達は事業者が行い、地主は借入れを必要としないと説明されています。出来上がった建物のうち、地主の持分は賃貸にも自宅にも使えます。
この方式は、相続した土地の使い道の一つです。ほかの選択肢との並べ方は相続した土地の使い道の選び方にまとめました。
地主が受け取る割合の決まり方

割合の決め方は、法令に定めがありません。国税庁や国土交通省の資料から、決め方の公式を見つけることはできませんでした。実際は契約で決まります。
Lnote には、次の2つの考え方が載っています。
- 出資比率による方法: 土地の評価額と建築費の比で持分を決める。土地が4億円、建築費が6億円なら、完成時の価値は10億円で、地主の持分は40%。
- 売価還元方式: 分譲住戸を含むときに多い方法。事業者が必要な売上を得るのに足りる面積を先に決め、残りを地主が取る。
どちらの場合も、土地の評価額と建築費の見積りで結果が変わります。契約の前に、次の点を書面で確かめます。
- 土地の評価額の出し方と、その根拠
- 建築費の内訳と、増えた場合の扱い
- 地主が取得する住戸の位置と面積
- 敷地の持分の割合と、登記の時期
複数の事業者から提案を取って並べると、条件の違いが見えます。事業収支の見方は土地活用プランの比べ方で説明しています。
所得税法58条の交換の特例が合いにくい理由

所得税法58条は、同じ種類の固定資産どうしを交換したとき、譲渡がなかったものとみなす特例です。条文は、土地は土地、建物は建物と、種類を分けて並べています。国税庁のタックスアンサー No.3502 には、次の要件があります。
- 渡す資産と受け取る資産が、どちらも固定資産であること
- 同じ種類の資産であること
- 渡す資産を1年以上持っていたこと
- 受け取る資産は、相手が1年以上持っていたもので、交換のために取得したものではないこと
- 受け取った資産を、渡した資産と同じ用途に使うこと
- 両方の時価の差が、高いほうの20%以内であること
No.3511 は、土地建物と土地を交換する場合を扱っています。総額が同じでも、建物の部分は同じ種類ではないため、特例を受けられないとされています。受け取る建物の価額が渡す土地の価額の20%を超えると、土地の部分も特例の対象外になります。
等価交換マンションでは、土地を出して建物の区分所有権を受け取ります。建物の価額が土地の価額の大きな割合を占めるのが普通です。No.3502 には、不動産業者が販売目的で持つ土地などの棚卸資産は特例の対象外とも書かれています。
ここから、58条は使いにくいと考えられます。ただし、契約の形によって扱いが変わりうるため、確定は税理士か税務署に確かめてください。
立体買換え(租税特別措置法37条の5)の要件

37条の5は「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例」です。マンションの場合は、条文の表の第2号が関わります。
- 譲渡する資産: 一定の区域内にある土地、建物、構築物。地上階数3以上の中高層の耐火共同住宅を建てる事業のために譲渡するもの
- 区域: 既成市街地等、近郊整備地帯等のうち政令で定める区域、中心市街地共同住宅供給事業の区域
- 取得する資産: その事業で土地の上に建築された耐火共同住宅(敷地の土地等を含む)
- 取得の時期: 譲渡の日の属する年の12月31日まで。見込みの場合は翌年の12月31日まで(やむを得ない事情があれば承認を受けて延長)
- 使い方: 取得から1年以内に、自分の事業か居住に使う
譲渡の収入金額が買換資産の取得価額以下なら、譲渡がなかったものとして扱われます。収入金額が上回るときは、上回る分に当たる部分だけが譲渡とされます。
条文の第5項は、等価交換のような「交換」を扱っています。資産の交換をしたときは、交換の日の価額で譲渡と取得があったものとみなして、この特例を適用します。国税庁の確定申告書等作成コーナーの解説では、4階以上の特定民間再開発事業と、3階以上の中高層耐火共同住宅の2つに分けて紹介されています。
この特例は課税の繰延べで、非課税ではありません。繰り延べた分は、売った土地の取得費が買換資産に引き継がれる形で残り、あとで買換資産を売るときに課税されます。区域や構造の要件は細かいため、事業者の提案書に特例の適用が書かれていても、自分の土地が区域に入るかを税理士に確かめます。
契約の前に確かめること

等価交換は、土地を事業者に渡す取引です。進めてから戻すことは難しくなります。次の順で確認します。
- 土地の用途地域と接道を調べ、マンションを建てられるかを見る。
- 複数の事業者から、土地の評価額と建築費、受取り面積の提案を取る。
- その土地が37条の5の区域に入るか、税理士に確かめる。
- 譲渡の年と取得の年、居住か事業かの使い方を、特例の期限に合わせて決める。
- 確定申告で、特例の適用を受ける旨を記載する。
取得した住戸を貸すと、相続税評価が変わる場合があります。仕組みは土地に賃貸住宅を建てると相続税評価はどう変わるかで説明しています。
提案を比べる段階では、土地の情報を一度まとめて、複数社に同じ条件で依頼すると比較がしやすくなります。
出典
- 所得税法 第58条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 租税特別措置法 第37条の5(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 タックスアンサー No.3502 土地建物の交換をしたときの特例 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3502.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3511 土地建物と土地を等価で交換したとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3511.htm
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー 措置法37条の5 https://www.keisan.nta.go.jp/r2yokuaru/cat2/cat21/cat218/tokurei/jobunjun/sochi37_5.html
- 国税庁 措置法第37条の5関係の通達 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/710826/sanrin/sanjyou/soti37/11.htm
- 東急リバブル Lnote(等価交換方式の解説。事業者のサイトです) https://www.livable.co.jp/l-note/?p=7206
いずれも2026年11月4日に確認しました。