相続した土地の使い道

相続税の納税資金で土地を売るか活用するか 取得費加算・延納・物納の確かめ方

内容の確認日: 2026年11月4日

相続税は、原則として金銭で、申告期限までに一括で納めます。期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。現金が足りないときは、土地を売る、延納や物納を申請する、活用で入る収入を使うといった選び方があります。

土地を売るなら、申告期限の翌日から3年以内に売ると、払った相続税の一部を売った土地の取得費に加える特例を使えます(租税特別措置法39条)。ただし、売る前に確かめることがいくつかあります。この記事は一般的な情報です。個別の判断は税理士や税務署などの専門家にご相談ください。内容は2026年11月4日に確認しました。

申告と納付は10か月以内

名古屋北税務署の庁舎
写真: 円周率3パーセント / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

国税庁のタックスアンサーNo.4205によると、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。通常は死亡の日が起点です。1月6日に亡くなった場合の申告期限は、その年の11月6日です。期限が土曜日や日曜日、祝日に当たるときは、その翌日になります。

納税も、この申告期限までです。期限までに納めないと、利息にあたる延滞税がかかる場合があります。遺産の基礎控除額の範囲に収まれば、申告も納税も要りません。

10か月のあいだには、遺産分割の話し合いや、土地の評価もあります。土地を売って納税する計画は、売却の手続きに必要な期間を足して、早めに立てます。売却先を探す、測量や境界の確認をする、買主と契約するといった作業が、申告期限までに終わるとは限りません。

申告期限までに現金を用意できないときの納め方には、延納と物納もあります。これらは申告期限までに税務署へ申請する決まりです。後半で説明します。

土地を売って払う: 取得費加算の特例

建物のない広い空き地
写真: JunK / Public domain(Wikimedia Commons)

相続した土地を売ると、売った利益に所得税と住民税がかかります。国税庁のNo.3208では、売った年の1月1日で所有期間が5年を超える土地や建物の税額は、課税長期譲渡所得金額に対して所得税15%、住民税5%です。復興特別所得税が別にかかります。所有期間の数え方は、国税庁の案内で確かめてください。

相続税を払った人には、この所得税の負担を軽くする特例があります。相続税額のうち、売った財産に対応する部分を、取得費に加算できます。取得費が増えれば、売った利益が小さくなります。根拠は租税特別措置法39条で、国税庁のNo.3267に次の3つの要件があります。

  1. 相続や遺贈で財産を取得した人であること。
  2. その財産を取得した人に、相続税が課税されていること。
  3. 相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ること。

加算できる額は、売った財産ごとに計算します。ただし、その金額が、この特例を使わずに計算した譲渡益を超えるときは、譲渡益相当額までです。つまり、この特例で譲渡益を赤字にすることはできません。

手続きは確定申告です。確定申告書に、次の2つを添えます。

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

3年の期限は、申告期限が起点です。売る予定が期限に近いときは、最終日を税務署か税理士に確かめます。

売るときに、ほかの特例との関係も見ます。国税庁のNo.3306には、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円の特別控除があります。この特例は、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例など、他の特例の適用を受けていないことが要件です。同じ土地で両方を使うことはできません。どちらが有利かは、売る金額と取得費で変わるため、計算して比べます。

売らずに払う: 延納と物納

福岡市城南区役所の庁舎
写真: そらみみ / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

土地を手放したくないときや、期限までに売れないときは、延納と物納があります。どちらも、金銭で納めるのが難しい事情があることが前提です。

延納

国税庁のNo.4211によると、延納は、年賦(年払い)で、金銭で納める方法です。要件は次の4つです。

  • 相続税額が10万円を超えること
  • 金銭で納付することを困難とする事由があり、その納付を困難とする金額の範囲内であること
  • 延納税額と利子税の額に相当する担保を出すこと(延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下なら不要)
  • 申告期限までに、延納申請書に担保の関係書類を添えて税務署長に出すこと

担保には土地も使えます。相続で取得した財産でなくても構いません。延納の期間中は、利子税がかかります。延納できる最長の期間は、財産に占める不動産等の割合などで変わり、割合が75%以上なら不動産等に係る分は最長20年です。利子税の割合は、令和8年1月1日現在の延納特例基準割合で計算した「特例割合」が表に載っています。その年の割合は、申請のときに税務署で確かめます。

物納

No.4214によると、物納は、延納でも金銭で納めることが難しいときに、財産そのもので納める方法です。申請できる財産は、国内にある不動産、国債、上場株式などの順位が決まっています。ただし、次のような不動産は、管理処分不適格財産として物納できません。

  • 担保権の設定の登記がある不動産
  • 境界が明らかでない土地
  • 共有の不動産
  • 耐用年数を経過している建物(通常の使用ができるものを除く)

他の土地に囲まれて公道に通じない土地で通行権の内容が明確でないもの、なども挙げられています。また、建築基準法上の道路に2メートル以上接していない土地や、市街化区域以外にある土地は、他に適当な財産がないときに限って物納できる物納劣後財産です。

物納の申請も、申告期限までに物納申請書と手続関係書類を出します。審査は申請期限から3か月以内に許可か却下が出ますが、財産の状況で最長9か月延びます。期限に書類がそろわないときは、延長の届出で最長1年まで延ばせます。却下されたときは、延納の申請に切り替えられる場合があります。

相続した土地を物納の候補にするときは、境界の確認や登記の整理が先に要ります。土地の利用状況の調べ方は、相続した土地の使い道の選び方にあります。

活用しながら払うときの考え方

住宅地で進む建て替え工事
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

土地を持ち続けて活用し、その収入で相続税を払いたいという考え方もあります。この場合は、時間の差に注意します。

  • 相続税の納付は申告期限までです。賃貸住宅を建てる場合は、設計と工事を経て入居が始まります。収入が入り始めるのは、申告期限より後になることがあります。
  • 活用の資金を借りるときは、建築費と相続税の納付が、同じ時期に重なります。納税の分を、活用の収支計画に入れておきます。
  • 延納を組み合わせると、納税を年賦に分けられます。担保や利子税の負担を含めて、収入と比べます。

活用の仕方によって、相続税そのものも変わることがあります。賃貸住宅を建てた土地の評価は、賃貸住宅と相続税評価の記事で説明しています。小規模宅地等の特例のうち、特定事業用宅地等には、その宅地等を相続税の申告期限まで有していることという保有継続要件があります(国税庁No.4124)。特例を使う予定なら、申告期限より前に手放さないよう、先に税理士に確かめます。

活用のプランを比べるときは、事業収支計画の中で納税のための資金がいつ必要かを見ます。比べ方は土地活用のプランを複数社から取り寄せたときの比べ方に、請求前の準備はプランを請求する前にそろえる資料にあります。

売る・延納・物納・活用を比べる

机に並んだスマートフォンや小型の機器
写真: Niklas Veenhuis / CC0(Wikimedia Commons)

表は左右に動かして読めます。

方法確かめること期限
売る売却益にかかる税と、取得費加算の特例の適用。空き家の3,000万円控除との比較特例は申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。納税は申告期限まで
延納金銭で納付できない事由、担保、利子税申告期限までに申請
物納延納でも困難であること、財産の順位、管理処分不適格財産に当たらないか申告期限までに申請
活用しながら払う収入が入る時期と納付の時期のずれ、建築費の資金納税は申告期限まで

どれか一つに決めなくても構いません。たとえば、一部の土地を売って納税し、残りを活用する組み合わせもあります。売る土地と残す土地の選び方は、評価額や利用状況で変わります。申告前に税理士へ相談しておくと、特例の適用や納税の順番を、実際の数字で比べられます。

相談先は、相続税の申告を扱う税理士や、税務署の相談窓口です。国税に関する相談は、国税庁の「税についての相談窓口」で案内されています。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。国税庁のページは令和8年4月1日現在の法令等です。

あわせて読む